〈vol.10〉ジオヒルズ【富岡 隼人】さんインタビュー

第一線で活躍する先人たちは、どんなターニングポイントを迎えてきたのか。
どこのサイトにも掲載されていないであろう、ワイン造りを目指したきっかけとワイナリー設立までの経緯をご紹介します。
今回は、ジオヒルズの富岡 隼人さんにお話をうかがいました。

 

 

GIO HILLSとは…?

島崎藤村ゆかりの老舗温泉旅館 <中棚荘> 5代目当主でもある富岡正樹さんが、<千曲川ワインアカデミー> 一期生としてワイン造りを学んだ三男の隼人さんを醸造責任者に迎え、2018年小諸市に設立したワイナリー。

正樹さんは、御牧ケ原で初の <マンズワイン> の契約農家として2002年からシャルドネの栽培をはじめ、2007年からはオリジナルワイン『中棚シャルドネ』を <中棚荘> のお客様に提供する傍ら、販売も行なってきました。

その後もメルロー、ピノ・ノワールを新たに植え、隼人さんが帰国してからはソーヴィニヨン・ブランや、標高が高く冷涼ということでアルザス品種のピノ・グリやゲヴェルツ・トラミネール、スパークリングワイン用にピノ・ムニエとさまざまな品種を植え、少しずつ畑の面積を広げてきました。

ジオヒルズの畑がある御牧原は地元の特産品「白土馬鈴しょ(別名 ミマキ男爵)」が育つ強粘土質の土壌で、雨が降ると土が締まり水分量をうまくコントロールしてくれるという働きを備え、メルローと相性が良い土壌といわれています。

このメルローを使った『MIMAKI Merlot2020』が海外のワインコンクールで金賞を受賞するなど、大きな成果を挙げていますが、メルローの他、標高830メートルという高地からなる上品な酸とミネラルを生かしたシャルドネも秀逸です。


 

「ワインづくりは一代では終わらない産業」と捉え、ワイン文化を次世代に伝えていくことを大切にしているという隼人さん。

NAGANO WINE SHOPがオープンする直前の2020年終わり頃にお話を伺った時には「地元小学生と苗木を植え、二十歳を迎えたときにワインを贈る計画を立てているんです。ワイン用ブドウ栽培がさかんで、今注目されている地元小諸を少しでも誇りに思ってもらえるように、また、たとえ進学や就職などで長野を離れたとしても、帰ってこれる場所があれば安心ですよね。

だから、自分はそんな場所をつくっていきたい」と話していました。

 

ーーーその翌年の2021年、ジオヒルズワイナリー関係者とともに <ワイン文化を未来へ繋ぐ会> を立ち上げたことを知り、彼はまさに有言実行の人なのだろうなと。

この <ワイン文化を未来へ繋ぐ会> は、苗木を植えた後もブドウの栽培体験学習を定期的に開催し、ブドウの成長過程を見てもらいながら、そのブドウからどうやってワインができるのか、さらにその先の販売までを目標にした活動を行い、次世代の子どもたちにワイナリーという6次産業の強みを活かした経験してもらい、彼らの人生の財産をつくりたいという素晴らしい志を持っています。

先月、長野ワインのイベントでお会いした時も「地元商業高校の生徒さんには数年後に、先輩たちが植えたピノ・ムニエのワインを販売してもらう予定で、デザイナーを講師として呼んで、ワインのラベルデザインも生徒たちに手掛けてもらうんです!!!」と話す意欲に満ちた表情から、こういう活動を始め、かつ継続させてていくことは、ワイン文化の未来を本気で考えている人にしかできないことなんだな…と気づかされました。

長野ワインに携わる方は、一見控えめかもしれないけれど決めたことをやり抜く実行力があって、内に秘めた強いエネルギーを持った方が多いように思います。

私もそんな一員になれるよう頑張らなくては!!!