〈vol.11〉NORTHERN ALPS VINEYARDS【若林 政起】さんインタビュー

第一線で活躍する先人たちは、どんなターニングポイントを迎えてきたのか。
どこのサイトにも掲載されていないであろう、ワイン造りを目指したきっかけとワイナリー設立までの経緯をご紹介します。
今回は、NORTHERN ALPS VINEYARDS の若林 政起さんにお話をうかがいました。

 

 

NORTHERN ALPS VINEYARDSとは…?

9歳年上の従兄弟でソムリエの若林英司さんの影響を受け、ワインに興味を持つようになった若林政起さん。

ワイナリー設立には膨大な設備投資が必要だったことから一度はその夢を諦めるも、醸造免許の規制緩和などを受け、2008年に実家の畑を借りてシャルドネやメルローを植えます。

実家の畑といっても、若林家の本家は江戸時代から代々続く土地があり、明治はじめ頃から現在の場所に広大な土地を所有していたそうです。

そして、大町市をワイン産地にと組合を立ち上げた叔父からブドウ栽培を学びます。

さらに、近隣のワイナリーや北海道の宝水ワイナリーで醸造を学び、自営でおこなっていた農業を株式会社化。2013年に「北アルプスの畑」という意味の〈ノーザンアルプスヴィンヤード〉を始動させます。

このシンプルな名前から、主役は畑、そしてブドウなんだという若林さんの想いが読み取れます。2015年、ついに念願だったワイナリーを設立。

ワインだけを見るのではなく、その向こう側にいる飲み手に目を向けた結果、品種や醸造法などにバリエーションをもたせるなど、飲み手の方々に楽しんでもらえる工夫ができたそう。また、アカデミーデュヴァンの教材として採用されるなど、品種個性を表現したワインが評価されています。

ノーザンアルプスヴィンヤードのワインをより身近に感じてもらえるよう、ブドウの樹の1年オーナーになって栽培体験ができるヴィンヤードクルーを募集するなど、新たな取り組みにも注目が集まります。


 

若林さんの写真を撮らせてください!!!

とお願いしたところ「自分よりもこの子をメインにしてください!」という少々シャイな若林さんですが、ワインづくりの苦労やいま考えていることなどなどたくさんのお話を聞かせてくださいました。

ーーー若林さんは当初、自然派とか有機栽培ということに重きを置いて栽培を行ってきました。しかし、2018年晩腐病によって畑がほぼ全滅し、結果リリースできたのは「Waltz-ワルツ-」という銘柄600本だけでした。

自然派は自分にとって持続可能な農業ではないと考え、除草剤を使わない代わりに3〜4年に1回だけ堆肥と殺虫剤を使うなど、これまでとは栽培方法を変えていきました。

さらに、コロナ禍になったことでワイナリーをどう存続させていくかをより真剣に考えるようになったといいます。

“西洋様式のワインにどう日本のエッセンスを取り入れていくか”という問いに対する答えを見つけるため、若林さんはワイン業界やその造り手以外の世界にも目を向けます。

例えば、茶道や陶芸・合気道など、日本の職人はどんな考えで仕事をしているのか…また、『トヨタ生産方式』や美術を題材にした漫画『ブルーピリオド』など多くの書籍からヒントを得て、日本の哲学の中に答えがないか模索しているそうです。

現在、畑の規模は4haから2haへと縮小し、ワインをつくるという本質を丁寧に捉えていきたいと気概を見せます。

どの記事にも書かれていない若林さんのリアルな想いを知ることができ、私自身もとても刺激を受けました。